夫が知らない間にカードローンを契約していて、たくさんの借金を作ってしまっていた。
夫がFXやギャンブルにはまってしまい、借金をしてまで続けている。
配偶者の借金で頭を悩ませている方は非常に多いです。
特に夫が隠れて借金をしてしまっているケースは、立場の弱い妻にとっては本当に大きな問題で、自分の力ではどうにもならないところまでいってしまっているケースも少なくありません。
そんな時、主婦がとるべき行動については、別記事で書きました。
⇒参考記事:「夫が借金!?その時主婦が取るべき行動」
しかし、どうしても許せない。
結婚生活を続けていくことができない。
離婚しよう。
そう決断する方もいらっしゃると思います。
そんな方のために、夫の借金が原因で離婚する前に知っておくべきことをまとめました。
基本中の基本ですので、ぜひ覚えておいてください。
目次
借金は離婚の原因とはなり得ない
まず初めに知っておいていただきたいことは、裁判所を介して離婚する場合、法律上は、借金が原因で離婚をすることを認めていないということです。
というのも、民法第770条にこう記載されているためです。
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる
一 配偶者に不定な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
読んでいただくと分かる通り、借金に関する言葉は一つも出てきていません。
そのため、裁判所を介する離婚となった場合には、五の「婚姻を継続し難い重大な事由」として多額の借金を挙げて、裁判所に認めてもらうことになります。
とは言え、日本の離婚のおよそ99%は話し合いによる離婚で、裁判所が判決を下して離婚をすることになるのは1%程度とのことです。
話し合いで離婚になる場合は、法律の記載は関係なく、お互いが合意すれば離婚できます。
そのため、法律上、借金が理由では離婚できないといことはとりあえず置いておいてだいじょうぶです。
むしろ重要なのは、お金の面の取り決めを、夫とうまく交渉することができるかです。
まずは、離婚にはどのような方法があるかを、簡単にまとめてみました。
協議離婚
協議離婚は、夫婦間による話し合いによって離婚することを決める方法です。
一番よくあるパターンですね。
日本では、どのような理由であれ、夫婦がお互いに離婚することに同意して、離婚届を提出すれば、離婚をすることができます。
ちなみに、離婚原因で一番多いのが性格の不一致ということで、その場合は二人とも納得の上で離婚の話が進んでいるでしょうから、協議離婚で決着をつけるケースが多いでしょう。
弁護士が間に入って取り持つ場合でも、裁判所を介さない離婚であれば協議離婚になります。
協議離婚の場合は、話し合いによって、財産の分配や、養育費の払い方の取り決め、慰謝料の支払いなどを決めていきます。
調停離婚
調停離婚は、家庭裁判所の調停委員が間に入って離婚をまとめる方法です。
協議離婚では、夫が離婚に応じない場合にこの方法をとることになります。
この時、調停調書というものに、財産の分配、養育費の払い方の取り決め、慰謝料の支払いなどについて書かれます。
ここで気を付けなければならないのは、調停調書の内容です。
調停証書は夫婦が調停委員を間に挟んで内容を決めていきます。
調停調書に書かれた内容を守って、お金の支払いなどをしていくわけですから、その調停調書が自分にとって不利にならないように進めていかなくてはなりません。
もちろん夫との交渉の仕方などで合意内容も変わってきます。
審判離婚
離婚調停を行っても話がまとまらない場合に、裁判官の職権で強制的に離婚を成立させる方法です。
審判離婚は、調停がうまくいかず、裁判官が離婚をした方がいいと判断したときだけしか行われず、あまり利用されることがないのが実情です。
裁判離婚
最後の手段、「離婚に応じてくれないなら裁判起こすからね」です。
調停でも離婚が成立しない時に、裁判所に離婚の訴えを起こして、判決によって離婚を成立させてしまう方法です。
ここで大事になってくるのが、上で書いた法律の内容で、「裁判官が離婚する事由が見つからない」と判断すれば、この裁判離婚は成立しません。
つまり、借金をしていた事実よりも、借金によって結婚生活が続けられないほどの状況か、ということが大事になってきます。
例えば、夫が債務整理をすれば、結婚生活を続けていけると裁判官が判断すれば、離婚できない可能性の方が高くなるでしょう。
裁判を行なっても離婚が成立しなかった場合は、離婚できないことになってしまいます。
離婚とお金
協議離婚、調停離婚、裁判離婚、どのような形の離婚であっても、やはり一番気になるのはお金の行方ですよね。
特にご自分が働かれていない専業主婦の方や、収入の少ない兼業主婦の場合は、夫からお金をもらうことができるかは、その後の生活にも大きくかかわってくることとなります。
それだけ大きな問題ですので、仮に協議離婚や調停離婚で話がつきそうな場合でも、「自分の力では、慰謝料や養育費など、相手とうまく交渉ができない!」と思われる方は、必ず弁護士に相談するようにしてください。
少し前置きが長くなりました。
本題に入りますが、夫が多額の借金を背負っている状態での離婚は、借金の扱いなどはどうなるのでしょうか。
離婚すると借金も財産分与の対象になる
離婚をする場合に財産分与が行われます。
これは、夫婦が結婚生活において作り上げた財産は、夫婦二人のものであるという解釈において、離婚する時に財産を均等に分配することを言います。
1000万円貯金があれば、500万円ずつ分け合うということですね。
では、借金がある場合には、この財産分与はどのようになるのでしょうか。
答えは、借金についても財産分与の計算に入れる、です。
ただし、計算に入れるのは、結婚生活を維持するための借金だけです。
住宅ローン、車のローン、食費などですね。
ギャンブルによる借金などは除外します。
1000万円の貯金があって、住宅ローンが500万円残っていれば、1000万円―500万円=500万円を二人で分け合うことになります。
つまり、250万円ずつ分配されます。(本当は住宅にも価値がつくはずなのでもっと複雑ですが、分かりやすくするために住宅の価値は0円とします)
しかし、借金の額があまりにも多すぎる場合は、財産と借金をすべて足し合わせたときにマイナスになることがあります。
この場合は財産分与でもらえるお金はありません。
その代わり、マイナスになってしまっている借金についても支払う必要はありません。
夫が生活費のために借金をしまくっている場合は、財産分与によってもらえるはずのお金が無くなってしまう可能性があるわけです。
そのため、生活費で夫が借金をしていそうだと感じた場合には、とにかく早く手を打って、借金の事実を把握するようにしてください。
結婚生活を維持していく場合でも、離婚する場合でも、早めに手を打って借金に手を出すのをやめさせることは、あなたにとって大きなメリットがあります。
借金まみれの夫から慰謝料はもらえるか
慰謝料を請求できるのは、相手の行為によって精神的苦痛が発生した場合のみです。
つまり、借金だけが理由で離婚する場合には、慰謝料を請求できる可能性は低いです。
また、慰謝料は相手の経済状況も加味して決められますので、多額の借金がある夫から高額な慰謝料をもらうことは難しいです。
そのため、借金が原因で離婚した場合に慰謝料をもらえる可能性はかなり低いと言えます。
借金が原因の離婚では、慰謝料はあてにしない方がよさそうですね。
養育費は必ず払ってもらえる
慰謝料と違い、養育費については必ず払ってもらえます。
養育費は子どもを育てていくために必要不可欠なお金という位置づけですので、夫が「おれは養育費を払わない!」と突っぱねたとしても、裁判所に申し立てて払わせることができます。
また、自己破産をしても、養育費は支払い続けなければいけません。
自己破産をすると、抱えている借金が帳消しになるのですが、養育費は非免責債権といって、自己破産で帳消しになる借金の対象外なのです。
ですので、「離婚した後、自己破産されたら養育費ももらえなくなるんじゃないか」と心配することはありません。
むしろ、自己破産することで他の借金がなくなれば、しっかりと養育費を払っていってもらえる可能性が高くなります。
協議離婚の場合、全ては話し合いで決めること
これまで書いてきた内容で忘れてはいけないことは、「協議離婚の場合は、全てが二人の話し合いで決まる」ということです。
つまり、話し合いでうまく交渉ができて、借金まみれの夫が「おれ慰謝料払うよ」と言えば、その慰謝料は問題なく受け取ることができます。
また、養育費の額についても話し合いによって決まってきますので、離婚をする際の交渉は非常に大事なものになります。
そのため、離婚の際は弁護士をつけて望むのが一番いいでしょう。
連帯保証人になっているとまずい
あなたが夫の借金の連帯保証人になっている場合があります。
代表的なのは住宅ローンなどですね。
連帯保証人になっていると、離婚をしても連帯保証人から外れることはできません。
お金を貸した側は、返済がしてもらえなくなってしまった時のために連帯保証人を立てさせたわけですから、離婚することで連帯保証人から外れるようなら、そもそも意味を持っていないことになってしまいます。
あなたが連帯保証人になっている場合、一番厄介なのは、離婚をした後に夫が自己破産などの債務整理をした場合です。
その場合は、連帯保証人であるあなたに請求がいくことになります。
「離婚したのに、なぜ!?」と思われるかもしれませんが、連帯保証人になることを承諾するということは、こういうリスクがついて回ることです。
もちろん債務整理をした夫は返済義務がなくなりますので、代わりに全額をあなたが支払わなくてはいけなくなってしまいます。
あなたが払えないとなれば、あなたも債務整理をするしかなります。
そう考えると、連帯保証人になっている場合には、夫と一緒に生活を見直して、二人で返済していく方が現実的かもしれません。
離婚をとるか債務整理をとるか
夫が借金を抱えていて離婚を考えているから、あなたはこのページにたどり着いてこの記事を読んでくださっているのだと思います。
これからの人生であなたが取れる選択肢は3つです。
- 夫に債務整理をしてもらう
- 夫と離婚して人生をやり直す
- あなたも今以上に働いて夫の借金を一緒に返していく
僕がおすすめする順番に書きました。
夫に債務整理をしてもらう
まず一つ目の「夫に債務整理をしてもらう」という選択についてです。
ひとつ覚えておいていただきたいのは、結婚している状態で夫が債務整理をしたとしても、あなたの信用情報には何も影響はありません。
クレジットカードを作ることもできますし、ある程度の収入さえあればローンも組めます。
債務整理をすることで、決して大きな余裕ができるわけではないですが、借金はなくなり(あるいは生活に支障がない程度に減額され)、返済日や夫の不審な行動に怯えることなく、その後の生活を送ることができます。
僕も1年前に個人再生という債務整理を行って、借金が5分の1に減額されました。
減額された残債を毎月支払っていますが、返済日に怯えることがなくなり、妻への隠し事もなくなったことで気持ちに大きな余裕ができました。
貯金も少しずつ増えてきています。
また、少し後ろ向きな理由にはなりますが、夫に多額の借金がある状態で離婚をすると、夫からもらえるお金はほぼ養育費のみとなります。
その点も要注意です。
少しでも夫を信じてみたいという気持ちがあるなら、債務整理を考えましょう。
お二人で一度借金の無料診断をしてみてください。
ライズ綜合法律事務所シュミレーターはウェブ上で無料診断をすることができます。
相談しただけではブラックリストに載る(信用情報に傷がつく)ことは絶対にないので、まずは相談だけという使い方ができます。
せっかくこの記事を読んでいただいたので、今動くことをおすすめします。
後回しにしても、借金の額が増えたりして、身の回りの状況は悪くなる一方です。
夫と離婚して人生をやり直す
どうしても夫のことは信用できない。
そんな気持ちになっているかもしれません。
それもすごく分かります。
一日中一緒にいることは不可能ですから、夫がひとりになった時に、友人からお金を借りてるかもしれない、ギャンブルしているかもしれない、下手したら闇金なんかに手を出しているかもしれない。
そう思いはじめると止まらないですよね。
離婚は結婚の数倍エネルギーが必要という話もよく聞きますが、まさにその通りだと思います。
でも、離婚する方がお互いにとってプラスに働くことがあるかもしれません。
離婚をする場合は、上に書いたように必ず弁護士に相談するようにしましょう。
夫からもらえるお金を漏れなく請求してくれるし、離婚後にいざこざが起きた場合も対処できるように、さまざまな面から手を尽くしてくれます。
口頭だけの協議離婚で済ませると、あとで養育費を払ってくれなくなったとか、いろんな問題が起きる可能性があります。
弁護士をつけて、しっかりと離婚という手続きを進めることこそが、あなたの次の人生にとって必要なステップです。
まずは一度弁護士に相談してみましょう。
夫の借金という理由があって相談するので、気持ち的なハードルはそんなに高くないと思います。
弁護士への相談は、こちらの相談サポート(離婚・調停)のサイトが使いやすいです。
自分で弁護士を検索することもできますし、相談サポートに弁護士を選んでもらうこともできます。
弁護士を選んでもらう場合は、あなたの状況や希望を入力すると、一番状況に合った適切な弁護士を選んでくれます。
合わないなと思ったら、別の弁護士に変えてもらうこともできます。
女性の専門家がいる弁護士事務所を探すこともできますし、初回相談無料(多くの事務所は初回相談無料ですが)の弁護士事務所を探すこともできます。
たくさんの弁護士の中から自分に合う弁護士が見つかるまで探すことができるので、相談サポート(離婚・調停)で一度相談依頼をしてみてください。
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あなたも働いて夫の借金を一緒に返していく
あなたも一緒に働いて、夫の借金がなくなるまで今の生活を続けるのも、一つの選択肢です。
でも、何もきっかけがないのに夫の生活態度や借金体質が変わるとは思えません。
実際僕も債務整理をするまでは、根本的な借金体質は変わりませんでした。
ライズ綜合法律事務所シュミレーターで無料診断をしてみるか、相談サポート(離婚・調停)で離婚を現実的なものにして、新しい人生に踏み出すべきです。