個人再生の手続きに入る前に、こんなことを考える人がいるかもしれません。
「どうせ債務整理で借金が圧縮されるんだから、手続き始める前にカードの枠を使い切ってしまおう」
でもちょっと待ってください。
債務整理への手続きに影響があるのではないでしょうか?
カードを利用するということ
クレジットカードを利用するということは、下記のいずれかになります。
・ショッピング枠を使って、高額な家電や換金率の高い金券を購入する
・キャッシング枠を使って、限度額ぎりぎりまで出勤する
いずれの場合でも、残っている利用枠を、一度にたくさん使っていくことには変わりはありません。
その利用履歴は、もちろんカード会社も把握していますし、裁判所に申し立てを行う個人再生・自己破産の場合でも、裁判所はその事実を把握することになります。
なぜなら、弁護士に債務整理を依頼した時点で、弁護士は各債権者(カード会社)に、取引履歴の開示を要求するためです。
そして、弁護士が把握した内容は当然、裁判所へも伝えられ、裁判所も知るところになるというわけです。
問題は、カード会社や裁判所がその事実を知った時に、どう動くかという点になります。
任意整理の場合
任意整理は、債権者と「将来の金利をカットして分割払いで払わせてください」と和解する手続きです。
少し想像していただくと分かるのですが、任意整理をする直前に明らかに不自然な額のカード利用がある人が「任意整理させてください」と言ってきたら、どう思うでしょうか。
「どう考えても返すつもりがないカード利用なのに、和解したいだなんて都合がよすぎる」と思われることでしょう。
任意整理は、債権者との1対1の取引であり、成立させるためには債権者との関係が非常に重要です。
いくら和解をしたいと申し出ても、相手が了承しなければ任意整理は成立しません。
よって、任意整理を行う直前の高額のカード利用は、和解をするのが非常に難しくなると言えます。
個人再生の場合
では、個人再生をする直前の高額のカード利用はどうでしょうか。
まず、裁判所が個人再生の申し立てを受け付けるための条件の一つに、不当な目的の申し立てでないことという項目があります。
この判断は裁判所が行うのですが、あまりにも悪質な借入であった場合には、「不当な目的の申し立て」と判断されて、申し立てを受け入れてもらえない可能性があります。
また、個人再生の場合には、手続きの途中で書面決議という、債権者全員による個人再生を許可するかどうかの賛成・反対の投票が行われます。
書面決議では、
・過半数の債権者が反対する
・反対した債権者から借りている額の合計が借金の総額の2分の1以上
になると、問答無用で手続きが終わってしまいます。
個人再生が書面決議の反対によって終わってしまうと、残るは給与所得者等再生にするか、自己破産しか手がなくなります。
この書面決議ですが、債権者は自分の判断で反対の意思を表明しますので、仮に個人再生手続きの直前に高額なカード利用をして債権者の心証が悪くなっていると、反対をされてしまう可能性があります。
少し違う話にはなりますが、僕が弁護士事務所に相談に行った時は、「ショッピング枠の現金化をカード利用枠の半分を超えてやっていると、書面決議で反対される可能性が出てくる」とアドバイスされました。
まあ、明確な基準ではなく、弁護士の今までの経験から話をしてくれたのだと思いますが、いずれにしてもカードの不正利用を原因に書面決議で反対される事例はあると言えます。
個人再生を考えられている方は、手続きの流れと、裁判所がどんなことを見ているのかを知っておくといいと思います。
個人再生の流れについては、下記の記事を読んでみてください。
自己破産の場合
自己破産の直前に高額なカード利用の履歴があると、最悪の場合免責(借金を帳消しにしてもらうこと)がおりない可能性があります。
破産法には、免責を許可しない理由の一つとして、以下の項目が書かれています。
難しい書き方ですが、要するに自己破産をするつもりがあって返すあてがないのに、返せるかのように嘘をついて、借り入れ・カードによる商品の購入をした場合は、免責を許可しないと読むことができます。
ですので、弁護士に相談に行く直前の高額なカード利用は、この項目に当てはまる恐れがあります。
もちろん、弁護士に相談するということは、明らかに自己破産するつもりだと言えますので、相談後の借り入れは完全にアウトです。
ただ、自己破産には、裁判所による裁量免責がありますので、よっぽど悪質な借り入れでない限りは、免責がおりないことはないでしょう。
また、自己破産をするにあたっては、詐欺破産罪という刑罰があり、自己破産直前の高額な借り入れは詐欺破産罪に問われる可能性も出てきます。
自己破産直前の高額なカード利用は絶対にやめておいた方がいいです。
債務整理の直前にカードを利用したら
弁護士の相談体験談などでよく見かけるのは、「借り入れをして返済をしている実績が足りないから、少なくとも半年は返済の実績を作ってから相談に来てください」と弁護士に言われたという内容です。
任意整理の場合はこのように返済の実績を作ることで和解が成立しやすくなるのかもしれませんが、そもそもあと半年も返済を続けられる余裕がない人がほとんどだと思います。
半年の返済実績を作るために、他社から借り入れをしてしまっては本末転倒です。
作ったばかりのカードを利用して返済実績がない場合には、正直にそのことを弁護士に話して、どうしたらいいか指示をもらいましょう。
返済実績を作ってきてくださいと言われたら、他の弁護士に相談に行けばいいです。
僕も、弁護士に個人再生の相談に行った時、作成してから半年経っていないカードを10万円のキャッシング枠いっぱい借りた状態で持っていました。
半年間の返済実績はなかったわけですが、問題なく弁護士と契約でき、個人再生の認可がおりました。
ですので、対応してもらえる弁護士を探し、洗いざらい相談するのが一番大切です。
こちらの記事で弁護士・司法書士の選び方を記事にしていますので、債務整理を考えられている方はこちらをお読みください。
債務整理直前の高額なカード利用はやめましょう
以上のように、債務整理直前のカード利用は、かなり大きなリスクがあることを覚えておいてください。
とは言っても、自転車操業中の人にしてみたら、債務整理の直前まで借り入れ返済を繰り返していることがほとんどだと思いますので、悪意のある借り入れでないのなら、正直に弁護士に打ち明けて相談してください。
ほとんどの場合は問題ないと言われるはずです。
債務整理に踏み切れないという方は、こちらの記事を読んでみてください。
僕なりの債務整理に踏み切るタイミングを線引きしてみました。