個人再生をするしかない。
でも、車はどうしても残したい。
前回までの相談では、車の問題は解決されませんでした。
というか、車のことはあきらめないと、債務整理自体がそもそもできないんじゃないかと腹をくくり始めました。
最後に。
最後にもう一度だけ弁護士と相談してみよう。
逆に業界最大手の弁護士事務所なら経験もノウハウもあるから、車をどうにかする方法を知っているかもしれない。
こうして選んだ事務所が、アディーレ法律事務所です。
※登場する人物名は、全て仮名です。
業界の巨人
業界の巨人。
まさにそんな言葉がふさわしいと思います。
債務整理を得意とする事務所の中では最大手の、アディーレ法律事務所です。
アディーレ法律事務所に対しては、ネットなどで騒がれているような悪いイメージは、僕は持っていませんでした。
CMをたくさん流しているから、利益をたくさん取らなければいけない金儲け主義の事務所と言われたり、新人弁護士が多いから業務が雑という噂があったり、とにかくいろいろ言われている事務所ではありますが、業界の最大手であることから対応実績は間違いなく豊富。
実績が豊富ということは、僕と同じように車を残したくてしょうがない依頼者の事例もたくさん持っているはずで、違った視点の相談ができるかもしれない。
僕の心は、重りをつけて水深の浅いプールを泳いでいました。
立ち止まって顔を出せば空気は吸えるから死なない。
けれど、前に進もうとすると、重りのせいで水底に沈み、息ができない。
もがいてもがいて、たどり着いた先が、業界の巨人。
アディーレ法律事務所に電話をかけて、相談の約束をします。
電話での相談はだいぶ慣れたのですが、面談は今回が2回目。
いったい今回はどんな弁護士と相談することになるんだろうか。
アディーレと相談の約束をしたのは、寒さが和らぎ始めた3月の中旬でした。
アディーレの事務所は、弁護士法人花火よりもさらにランクの高いビルの上層部にありました。
たくさんの店舗が入っている、まさに都市の中心部にふさわしいビルです。
相変わらず弁護士事務所に入るのは緊張するので、10分前にビルの前のコンビニに入り、温かいお茶を買って心を落ち着かせます。
一息つき、意を決してビルのエレベータに乗り込みます。
一緒に一般のお客さんも同じエレベーターに乗り込んできます。
アディーレのある階で降りる僕のことを、この人たちはどう思うのだろうか。
そんなことを考えてしまいます。
世界から自分が取り残されているような錯覚を受けます。
いや、錯覚ではない。
頑張っている人たちの集団からは確実に取り残されています。
エレベータは静かに止まり、目的の会に着いたことを伝えます。
とても広い空間が広がっていました。
アディーレの事務所は扉がなく、中に入るのに抵抗がありませんでした。
中はちょっとした待合室のようになっていて、中年のおばさんや、若い男性などが順番を待っていました。
僕は近くにいた事務所の女性の方に予約してあることを告げ、待合室のソファに腰掛けます。
アディーレはCMから債務整理のインパクトが強すぎるため、どうしてもここにきている依頼者の人たちは、全て借金を抱えて悩んでいる人に見えてしまいます。
法律事務所として有名なのはとてもいいことですが、あまりにも債務整理に特化していると、事務所に入るのもためらわれるなと感じます。
しばらく待っていると、先ほどとは違う女性の方が僕を呼びに来ました。
立ち上がり女性の後をついていくと、部屋の中に入るように促されます。
その部屋は、弁護士法人花火で相談をした時と同じくらいの広さでした。
心と違ったのは、代表の石丸幸人さんの大きなポスターが貼ってあり、机の上に置いてある本も、石丸幸人さんの書いた本が並んでいました。
「トップがかなり強い組織なんだな」
と思いながら、椅子に座ります。
椅子は4つ。
テーブルは1つ。
テーブルを挟んで向かい側に、案内してくれた女性が座ります。
「はじめまして、事務員の長谷川です。本日はよろしくお願いします」
まさ「あ、こちらこそよろしくお願いします」
長谷川「早速ですが、こちらの紙を記入になって、少しお待ちくださいね」
そう言って、長谷川さんは部屋を出て行きました。
渡された用紙に目を落とします。
その用紙には、心の時よりもさらに細かい項目が並んでいました。
借入先、借入額といったおなじみのものから、家族構成や実家の両親の連絡先まで。
契約を前提で話を進めるんだろうなと思います。
もう何度も利用している自作の借入一覧の資料を取り出し、借入先から順番に記入していきます。
長谷川「お待たせしました」
長谷川さんが戻ってきました。
手には紅茶をもっています。
「どうぞ」と言われ、差し出された紅茶を受け取ると、長谷川さんは記入しかけの用紙を見せてくれと言いました。
長谷川「一緒に記入していきましょう」
そういうと長谷川さんはペンを取り出します。
長谷川「あ、自分でまとめてきてくださっているんですね。見せていただいてよろしいですか?」
僕の作った資料を指して言います。
あくまで自分で読むために作っている資料なので、恥ずかしい気持ちがありましたが、素直に長谷川さんに渡します。
僕が作ってきた資料は、必要な情報がしっかりとまとまっていたようで、資料だけを見ながらほとんどの項目は埋められました。
長谷川「ボーナスはしっかりと出ていらっしゃるんですね。お給料も低くないです」
長谷川さんは記入した用紙を見ながら話します。
事務員ということもあるせいか、長谷川さんは母親のような雰囲気を持っていて、とても話しやすい人でした。
世間話もしながら、用紙を埋めていくことで時間が過ぎていきます。
長谷川「個人再生をご希望ということでしたよね」
話が次のステップに進みます。
長谷川さんはおそらく相談者全員に配っているであろう冊子を取り出し、ぺらぺらとめくります。
長谷川「えっと、個人再生・・・あった」
真ん中あたりのページを開いて見せてくれます。
長谷川「個人再生の場合、借金が5分の1に圧縮されます。弁護士費用としては着手金として53万円いただきます」
まさ「53万円以外にかかるお金はありますか?」
長谷川「必要があれば裁判所が再生委員という方を指名することがあります。再生委員が指名されると、弁護士費用とは別に再生委員報酬を支払う必要があります。その金額が15万円ですね」
続けて長谷川さんは進めます。
長谷川「つまり53万円と15万円を足した68万円が、まささんの払うお金の合計になります。ここまではよろしいですか?」
まさ「はい。だいじょうぶです」
調べてきた範囲のことなので、軽く頷きます。
長谷川「手続きの流れですが、まささんの場合は、まず月々8万円ずつ払っていただきます。それを弁護士費用として積み立てていきます。そして、6月にボーナスが入りますよね?そのボーナスを全てこちらに預けていただきます」
まさ「はい」
長谷川「6月のボーナスで60万円ほど積み立てられると思いますので、このボーナスで弁護士費用の53万円が揃うことになります。53万円を超えた分のお金は、預り金としてこちらで預かります。再生委員報酬が必要になったら、この預り金から支払います。そして弁護士費用が揃った6月から申し立てを開始します」
長谷川「申し立てを行って、順調にいけば6か月後に手続きが完了します。この6か月間も、毎月8万円ずつこちらに振り込んでいただきます。少ないお金でやっていくためのトレーニングですね。この期間に振り込んでいただいたお金は、全て預り金となります。手続きが完了したら預かり井金は全額返金します」
つまり、簡単に言うとこういうことになります。
弁護士事務所と契約を結んだ月から、毎月8万円を弁護士事務所に渡し続けます。
弁護士事務所はその中から着手金の53万円をもらい、再生委員報酬もそこから払います。
着手金と再生委員報酬を除いたお金は全て預り金という形になり、手続き完了後に返金されます。
月の給料から8万円減らした状態で生活していく練習か。
紅茶を口にします。
それがどれほどきついことか、給料と家計の資料を作った自分は、よく分かっています。
でも、月々25万円を返済してきた今までに比べたら、はるかに楽になります。
8万円だけに集中すればいい。
まさ「だいたいわかりました」
大事なことを聞かなければいけません。
まさ「あの、車を残したいのですが」
長谷川さんは答えます。
長谷川「残念ですが、個人再生の場合は、車は手放さなくてはいけません」
ああ、やっぱりそうか。
何度聞いても、この言葉だけは心に突き刺さります。
長谷川「手続きの進め方で分からないところはありますか?」
まさ「いえ、ないです」
長谷川「それでは、弁護士を呼んできますので、少しお待ちください」
長谷川さんはそう伝えると部屋を後にしました。
一人になった部屋の中で考えます。
やっぱり車を残すのは無理なのか?
自分が核として持つべきところは車じゃないことは分かっている。
でも、車がなくなれば、それは家庭を失うことと等しい。
思考が頭の中でぐるぐると回ります。
10分ほど経ったでしょうか。
ドアが開いて、見知らぬ女性と、長谷川さんが入ってきます。
「はじめまして、弁護士の近藤と申します」
今回の弁護士は女性でした。
後ろからついてきた長谷川さんが、心なしか小さく見えました。
やはりそこは、事務員と弁護士の関係なのでしょう。
近藤「まささんの場合、個人再生の手続きをおすすめします。個人再生の手続きを取れば、月々7万円強の返済で生活を立て直すことができます」
長谷川さんから聞いていた内容と同じだ。
近藤さんの話し方は、はきはきとしていて淀みがない。
「幸いなことにボーナスが非常にしっかり出ています。ボーナス月を多めに返済することで、月々の返済をさらに抑える方法もとることができます」
近藤さんは続けます。
「1点、だいじょうぶだと思いますが、個人再生の手続きがうまくいかない場合があるので、それをお話しします」
近藤さんは、先ほど長谷川さんが説明に使っていた冊子を取り出します。
「債権者に対しては消極的同意のもと、個人再生の手続きを進めることになります。手続きの途中で債権者に個人再生を進めてもいいか、決を採ります。債権者の2分の1が個人再生に賛成しなかった場合、個人再生ではなく、給与所得者再生で手続きをしなくてはならなくなります。給与所得者再生になると、月々の返済が7万円より増えることになります」
僕が今まで使ってきた個人再生とは、小規模個人再生と呼ばれるものです。
小規模個人再生の要件に、債権者の消極的同意が必要という項目があります。
消極的合意とは、期間内に”反対です”と申し出なければ、賛成として数えるという方法です。
反対した債権者が全債権者の頭数の半数未満で、かつ、反対した債権者に借りているお金の合計が、全ての借金の2分の1以下である、ということが個人再生手続きの認可の条件になります。
この点においては、債権者の意志によるものだから、コントロールはできません。
近藤「しかし、私たちも個人再生で進められるように、全力で頑張らせていただきます」
近藤さんは言います。
さすが業界の大手の事務所。
説明がとても分かりやすいし、冊子もよくできている。
では、車についてはどうなんだろう。
まさ「車のことについてなのですが、やはり残すのは難しいですか?」
最高裁の判例の話も出しました。
近藤「確実に残したいなら、任意整理の手続きにする必要があります。任意整理にして月々21万円ずつ払えば車は残せます。どうしても車を残すなら、任意整理の方向でご家族と話をつけてきてください」
まさ「いや、ちょっと金銭的に厳しいと思います・・・。車を残せないと妻と離婚することになるかもしれなくて」
近藤「離婚調停のご依頼ですか?」
いや、そこまでの話はしてないです。
近藤「まささんはディーラーでローンを組まれていますが、これが非常に厄介なんです」
思ってもみなかった言葉でした。
近藤「車のローンの債権者は、債務整理に入るとすぐに、裁判を起こして車の引き上げを要求してきます。私たちは車の引き上げに応じません。車の引き上げに応じると大変なことになるからです」
そんな話、はじめて聞いたぞ。
まさ「じゃあ、裁判所次第では、車が残ることもあるんですか?」
近藤「そうですね。この前手続きを済ませた方は、車に乗り続けていましたし。ただし、車を残せたとしても、売ることはできなくなってしまいますけど」
なぜそんな事態になるのか近藤さんに聞いたのですが、専門用語が多く、詳細は記憶していません。
ただ、重要なのは、車の所有者、つまり車検証に書かれている所有者が、債権者となる会社の名前ではなくて、ディーラーになっていることです。
返済は債権者に平等に対し行わなければならないという法律があって、それに反するためだという主旨でした。
何においてもアディーレに相談して感じたこと。
さすがにここまで大きな事務所なだけあって、分かりやすく説明する準備が整っているということ。
車の件でも分かるように、実績が豊富だから、扱った事例も豊富で、さまざまなケースに対応してもらえそう。
ということでした。
そして、車という重りを外す手助けをしてくれました。
確実でなくてもいい。
車が手元に残る可能性があるのなら、ここに賭けるしかない。
追い詰められていた僕がとった選択肢は、アディーレの懐に飛び込むことでした。
アディーレに相談して感じたこと
アディーレ法律事務所との相談の雰囲気、なんとなく感じ取ってもらえたでしょうか。
正直、準備の良さは、さすがアディーレと言わざるを得ませんでした。
特に、相談者に無料で配っている冊子、とても分かりやすく作られていて、費用などの情報もしっかりと載っています。
説明を受けている間は、まるで会社の説明会に招待されたかのような気分でした。
実は、相談にいったのが15:00で、事務所を出たのが17:30くらいだったので、2時間半も事務所にいたことになります。
事務員さんは優しく色んな事を教えてくれるし、弁護士も話し方がしっかりとしていて、相談者のことを見下したような感じもしませんでしたので、話しやすい方でした。
とにかく全体的に、清潔で、明るくて、しっかりしている、というのが相談時の印象です。
車が残せるかどうかという話については、かなり難しい法律の話が絡んできますので、こことは別の記事で詳細を書きたいと思います。
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